大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和35(オ)498 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人上野開治の上告理由第一点について。

原審が確定した事実関係は、挙示の証拠により是認できる。しからば、かかる事

実関係の下においては、たとい所論のように訴外Dが被上告人の印章を所持してい

たからといつて、上告人の代理人たる訴外Eにおいて、訴外Dから同人が被上告人

を代理して債務引受をする権限を与えられている旨の言明を受けた場合、かかる言

明をたやすく信用することはできない筈であり、仮りにこれを信用したとすれば、

それは訴外Eの不注意というべく、従つて代理権あることを信ずるにつき正当の理

由あるものとは認められないから、上告人の表見代理の主張は採用できないとした

原判決の判示は正当である。所論引用の判例は、本件とは事実関係を異にするもの

であつて、本件に適切でない。それ故、所論は採るを得ない。

同第二点について。

原判決は、抵当権設定ということで話が進められて来たのに、登記書類作成の際

にわかに主債務者を被上告人とする旨の談合がなされたものであるから、かかる事

実関係の下においては、訴外Eにおいて、訴外Dが被上告人を代理して債務引受を

する権限まで与えられている旨の言明をたやすく信用すべきでなく、もしこれを信

用したとすれば、それは訴外Eの不注意であつて、右代理権あることを信ずるにつ

き正当の理由あるものとは認められず、上告人の表見代理の主張は採用できない旨

を判示しているのである。されば、原判決には、その間何ら所論の違法は認められ

ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

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おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 高 木 常 七

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